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きのこの旅 〜3日目〜

一面の雪に反射した光が眩しく、ぼくは思わず手をかざした。
しかし旅人は、どんなに眩しくても列車の窓のカーテンを閉めない。
なぜならば風景が見えなくなるからだ。
迷惑である。


さて、きのこの旅3日目。
最大の目的を果たしたありけんは、「海に行く!」と豪語しておきながら、あっさり山に向かっていた。

新潟から会津若松行きの3両編成列車は、雪景色の中。
会津への車窓は水に満ちあふれていた。

川にダム、用水路。
集落のどの家にも小さな水溜(池)が2、3あり、そこで洗いものなどをするのだろう、とにかくきれいだった。


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ちょうどお昼あたりに会津若松に着き、駅でラーメンを食べた。
そう、喜多方ラーメン。

僕はよく駅ソバを食べる。
駅ソバは観光地でないかぎり、地元の人達を相手に商売している。
つまりその土地の味付けで、かつ美味しくないとお客は来なくて成り立たないんだ(ありけん調べ)。
だから駅前でやたら高い郷土料理を食べるよりは、駅ソバの方がその土地の味を知れることが多い。
ここは観光地だったけど、ラーメンは美味しいかった。


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さて、ここ福島の会津から帰路が2通りあった。
ひとつは郡山方面へ。
もうひとつは只見線で高崎方面へ。

僕は1日3本しか走ってないという『只見線』を選んだ。
理由は、すごそうだから。

6:00   13:08   17:03

時刻表もいたってシンプルである(終点の小出まで行かないやつはもう少しあるよ)。


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2両編成の列車は、どんどん山間地へ踏み入ってゆく。
乗客も皆4人席に一人ずつ足を伸ばしている。
この5時間近い只見線を終点まで行く人は、みんな旅人である。
電車が好きな人、旅が好きな人、もっとべつの理由でこの列車に乗り合わせた人もいただろう。
みんな車窓に釘付けだ(笑)。

雪はどんどん深くなり、やがて只見駅に着く頃、積雪はメートル単位になっていた。
3月の初め、街道はまだ冬期不通でその景色は雪国そのもの。


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【列車は数十分おきに7分程度の停車をする。
単線のすれ違いを待つわけでもなく、休憩のためかな…。
だけどこの時間がたまらない。
みんな外に出てタバコを吸ったり、写真を撮ったり。
だけど夢中になりすぎるのは注意!
置いてかれたら死ぬしかない(笑)。】



途中、ずっと隣の4人席に座っていた女性と仲良くなった。
一人では自分の写真が撮りにくいので、お願いしたのだ。

彼女は単身赴任の旦那様に会いに行った帰りらしく。
なぜ郡山から川崎に帰るのに、こんなスペシャルな遠回りをしているのか聞くと。
雪を見るのが好きで、この超ローカル線に乗ったと答えた。
切符はもちろん18切符。

しかし、いろんな人がいるもんだ。
(僕は豪雪地帯ということすら知らなかった)

旅は道連れ、しばらくルートも同じなのでご一緒することにした。
僕はチョコを、彼女はかまぼこをくれた。
それぞれの旅やいろんな話は尽きない。


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【上条駅。只見線お得意の7分休憩。
この写真は降りしきる雪の中での、ありけん得意の置き撮り撮影。】



終点の小出(こいで)から、この旅2回目の上越線に乗り換えた時はすっかり夜だった。
越後湯沢駅で新幹線に乗り換えるという彼女とわかれて、ガーラ湯沢駅などスキー場地帯の山間部を跳ねるように猛スピードで進んだ。

おにぎりとパンを買い、高崎線に駆け込んだ時は21時を回っていた。
列車に乗ってちょうど10時間。
10時間を超えると乗り物は辛くなってくるものだ。
疲れも溜まってきてるし。

大宮を過ぎ、車窓はやがて見慣れた都心の夜景に変わってきた。


旅の終わりは寂しいものである。
明日からまたいつもの生活(+ロスした分)や問題がやってくると思うとなおさら。

だけど、今回は全然平気でした。

明日もやってやる!
そう思える帰路でした。


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いつもは時間に追われ、電車での移動時間も常に何か作業をやっていないと落ち着かない生活です。
それをこの3日間、ただただ車窓をぼ〜っとみて一喜一憂できたこと。
1時間単位の待ち時間も、なんの苦もなくプラプラ過ごせたこと。
贅沢で幸せでした。

また、いろんな人と関われたり、その場その場で好き勝手に動けたことも幸せでした。


旅はきっかけ。
今回は『きのこの旅』。

次回はいつになるか分かりませんが『鳥取砂丘、らくだはニンジンを食べるのか?実証の旅』とか、ふらりまたどこかへ行きたいと思います。


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動き出す列車の窓には、僕さ




 <きのこの旅:おしまい>

by ariken-essay | 2007-03-11 20:29  

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