角を曲がってバスが来る(エピソード1)
2009年 06月 21日
大きなけやきが見下ろすバス停に人影はなく、出たばかりだということはなんとなく分かった。
時刻表を見るとやはりバスは出たばかり、次まで20分待ちだった。
見上げる夜空はけやきの向こう、北へ流れる灰色の雲の間に星が見えた。
自分はバスを利用することが多い。
都内のバスは大抵すぐに次がやって来るのだけど、この路線は乗り遅れた時の待ち時間は長い。
子どもの頃は乗り物酔いが激しく、バスなどに乗った日にはすぐに気分が悪くなっていた。
遠足や修学旅行に行く時などは、梅干しをタッパに入れて持たせられ、気分が悪くなるとそれを食べながらやり過ごしたのを覚えている(何で梅干しだったのかは謎)。
しかしそんな自分も、成長とともに乗り物酔いはしなくなっていった。
きっとやってきてくれるバスを待つのは、好きだ。
いろんなことを考えたりもする。
〜エピソード1〜
『日本最長距離のバス、ムーンライト号』
日本にはたくさんの長距離バス(夜行バス)が運行されている。
安価な上に、翌朝早く現地に着けるので便利なのだ。
そんな深夜バスの中でもキングと呼ばれたのが(ありけんしか呼んでない)東京〜福岡間(バスの中では日本最長距離)を走る『ムーンライト号』だった。
走行時間は14時間20分、価格は片道15000円のこのムーンライト号。
登場したては相当の人気で、多い時は6台全席満席という状態で連なって東西日本を駆け抜けた。
当時学生だったありけんも大きな期待を胸に、噂のムーンライト号に乗り込んだ。
構造は普通のバスとは違っていて、シートは2席ずつではなく1席ずつで幅広く、3列になっていた。
トイレやラウンジ、テレビモニター、ラジオまで付いていて、シートを倒すと水平までとはいわないがしっかり横にもなれた。
初めてこの座席に座る者ならばきっと、これならばシンガポールまで行ける!と確信するだろう。
しかし、バスの旅は列車の旅とは違っていた。
空間が狭く、体勢が一緒なのである。
寝て起きて、また寝て起きて、さらにまた寝ておきてもまだ着かないのである。
そりゃ音楽も聞き飽きるさ。
本を読めば酔うし。
やがて10時間を越えると、みんなの寝返りとため息とうめき声が聞こえ出し。
「こりゃきついですね〜」と近くの座席どうし仲良くなったりする者も出てくる。
いくら快適とはいえ、同じ場所に14時間20分座り続ける辛さは、この旅を経験した者でないと分からないだろう(自分は4回乗った)。
やがて、航空会社が値段を下げ始めたためか、この旅がいかに過酷かを知る人が増えたためか、いつしかムーンライト号という名前は消えてしまった。
現在は『はかた号』と名前を新たにして運行している(条件はムーンライトとほとんど同じ)。
飛行機が動き出す、新幹線が動き出す、列車が動き出す。
それぞれの瞬間に、行こうとする土地への期待や、この土地を去って行く想いがふっとわき起こる。
自分はそれぞれの瞬間がすごく好きだ。
しかし、今から14時間以上もの旅が始まるムーンライト号の出発は、バスの大揺れとともに旅愁は他のどれより格別なのである。
新宿バスターミナル21:00発→天神バスセンター11:20着。
館内放送が鳴り、やがて『博多、福岡バスセンター行き』の表示を掲げた超大型バスがゆっくりと大揺れに角を曲がってターミナルに入場してくる。
それは威厳に満ちていて、通りすがりの誰もが立ち止まってその旅を想像してしまう。
さらに止まったバスが『プシュー』なんて音をたててみなさい。
もう、かっこいいったらありゃしない。
まだ乗ったことのない人で福岡にご予定のある方は、ぜっひ乗ってみてください!
え、、自分?
自分は、、またいつか乗りたいと思います。
次回は、
〜エピソード2〜『北国、中島みゆき号』です
時刻表を見るとやはりバスは出たばかり、次まで20分待ちだった。
見上げる夜空はけやきの向こう、北へ流れる灰色の雲の間に星が見えた。
自分はバスを利用することが多い。
都内のバスは大抵すぐに次がやって来るのだけど、この路線は乗り遅れた時の待ち時間は長い。
子どもの頃は乗り物酔いが激しく、バスなどに乗った日にはすぐに気分が悪くなっていた。
遠足や修学旅行に行く時などは、梅干しをタッパに入れて持たせられ、気分が悪くなるとそれを食べながらやり過ごしたのを覚えている(何で梅干しだったのかは謎)。
しかしそんな自分も、成長とともに乗り物酔いはしなくなっていった。
きっとやってきてくれるバスを待つのは、好きだ。
いろんなことを考えたりもする。
〜エピソード1〜
『日本最長距離のバス、ムーンライト号』
日本にはたくさんの長距離バス(夜行バス)が運行されている。
安価な上に、翌朝早く現地に着けるので便利なのだ。
そんな深夜バスの中でもキングと呼ばれたのが(ありけんしか呼んでない)東京〜福岡間(バスの中では日本最長距離)を走る『ムーンライト号』だった。
走行時間は14時間20分、価格は片道15000円のこのムーンライト号。
登場したては相当の人気で、多い時は6台全席満席という状態で連なって東西日本を駆け抜けた。
当時学生だったありけんも大きな期待を胸に、噂のムーンライト号に乗り込んだ。
構造は普通のバスとは違っていて、シートは2席ずつではなく1席ずつで幅広く、3列になっていた。
トイレやラウンジ、テレビモニター、ラジオまで付いていて、シートを倒すと水平までとはいわないがしっかり横にもなれた。
初めてこの座席に座る者ならばきっと、これならばシンガポールまで行ける!と確信するだろう。
しかし、バスの旅は列車の旅とは違っていた。
空間が狭く、体勢が一緒なのである。
寝て起きて、また寝て起きて、さらにまた寝ておきてもまだ着かないのである。
そりゃ音楽も聞き飽きるさ。
本を読めば酔うし。
やがて10時間を越えると、みんなの寝返りとため息とうめき声が聞こえ出し。
「こりゃきついですね〜」と近くの座席どうし仲良くなったりする者も出てくる。
いくら快適とはいえ、同じ場所に14時間20分座り続ける辛さは、この旅を経験した者でないと分からないだろう(自分は4回乗った)。
やがて、航空会社が値段を下げ始めたためか、この旅がいかに過酷かを知る人が増えたためか、いつしかムーンライト号という名前は消えてしまった。
現在は『はかた号』と名前を新たにして運行している(条件はムーンライトとほとんど同じ)。
飛行機が動き出す、新幹線が動き出す、列車が動き出す。
それぞれの瞬間に、行こうとする土地への期待や、この土地を去って行く想いがふっとわき起こる。
自分はそれぞれの瞬間がすごく好きだ。
しかし、今から14時間以上もの旅が始まるムーンライト号の出発は、バスの大揺れとともに旅愁は他のどれより格別なのである。
新宿バスターミナル21:00発→天神バスセンター11:20着。
館内放送が鳴り、やがて『博多、福岡バスセンター行き』の表示を掲げた超大型バスがゆっくりと大揺れに角を曲がってターミナルに入場してくる。
それは威厳に満ちていて、通りすがりの誰もが立ち止まってその旅を想像してしまう。
さらに止まったバスが『プシュー』なんて音をたててみなさい。
もう、かっこいいったらありゃしない。
まだ乗ったことのない人で福岡にご予定のある方は、ぜっひ乗ってみてください!
え、、自分?
自分は、、またいつか乗りたいと思います。
次回は、
〜エピソード2〜『北国、中島みゆき号』です
by ariken-essay | 2009-06-21 16:43